日本共産党の福祉政策
概要
日本共産党は、医療・年金・介護・福祉・生活保護など社会保障全体の拡充を主張し、「誰もが安心して暮らせる社会」の実現を目指しています。
具体的には、医療では「保険証1枚」で誰でも受診できる制度の維持・強化、窓口負担の軽減・無料化、後期高齢者医療制度の廃止などを掲げます。
介護・福祉では、介護保険サービスの削減や介護料の負担増に反対し、サービスの充実・施設整備、介護・福祉職員の待遇改善、利用料の減免などを進めます。
また、生活保護制度を「生活保障制度」と位置づけ直し、必要な人すべてが利用できるように、支給水準の引き上げ、申請しやすい運用への改善、扶養照会や資産要件の撤廃などを訴えています。
このように、日本共産党は「福祉切り捨て」に反対し、公的責任による包括的支援体制の強化を政策の中心に据えています。
高齢者福祉の具体的政策
🎯 基本方針 — 「高齢者の人権と尊厳を守る社会」
- 共産党は、高齢者を「多年にわたり社会の進展に寄与してきた者」「豊富な知識と経験をもつ者」と位置づけ、社会全体で「敬愛」「尊重」をもって支えるべきと考えています。
- 高齢者が「安心・安らかに」「生きがいをもって」暮らせる社会をつくることを、政治の重要な責任と位置づけています。
- 現政権による年金削減、医療費負担増、介護サービス抑制などを強く批判し、それらの「改悪」をくいとめ、制度の拡充・改善を図ることを基本とします。
🧓 年金 — 「頼れる年金制度」への改革
共産党は、単に「年金を守る」のではなく、「無年金・低年金を生まない」「最低限の年金をすべての人に保障する」制度への転換を目指しています。
- 現行の年金制度には、「すべての人に最低保障年金を保証する」仕組みがありません。公的年金制度に「最低保障年金」を導入すべきと主張しています。
- 物価高騰のもとで年金が目減りする現状(実質削減)に対し、年金額の実質改善を求めています。
- また、年金制度の安定的な財源を確保するため、高所得者層の社会保険料上限の見直し、労働者の賃金底上げ・待遇改善を通じて「現役世代の支え」を強化する政策を訴えています。
🏥 医療・医療保障 — 医療アクセスと負担軽減優先
高齢者が必要な医療を受けやすくするための制度改善を重視しています。特に「高齢者医療制度の見直し」「窓口負担の軽減」「保険証の保持」を主張しています。
- 高齢者が保険証1枚で医療を受けられる仕組みを守り、マイナ保険証の強制や健康保険証の廃止に反対しています。
- 窓口負担の軽減や無償化を含む医療費負担の見直しを進めることで、経済的事情で医療をあきらめる高齢者を減らすことを目指す地域政策も訴えます。たとえば、特定自治体では、75歳以上の医療費無料化を求める運動を支持しています。
- また、公立病院や地域医療の充実にも言及しており、民営化・指定管理者制導入などには反対の立場を取る自治体政策もあります。
🩺 介護 — 危機打開と制度の抜本改善
近年深刻になっている介護現場の人材不足・事業所の減少など「介護の危機」を強く問題視し、制度の抜本改善を掲げています。
- 国による財政支援を大きく拡充し、介護事業所・施設の維持、運営の安定を図る ― 特に、経営悪化で廃業・撤退しかねない事業所への支援を訴えています。
- 現在進められている介護保険の保険料・給付見直し(軽度者の給付除外、自己負担拡大など)に反対。給付の拡充、保険料・利用料の減免制度の強化を求めています。
- また、「介護サービスだけでは対応できない高齢者虐待・社会的孤立・貧困」などの問題にも、自治体福祉(措置)機能を強化し対応することを訴えています。
- 高齢者が安心して住み続けられるよう、低廉かつ質の高い住宅支援・住まいの保障にも言及。住宅問題を福祉の重要な一部ととらえています。
🔧 財源・制度設計に関する考え方
共産党は、高齢者福祉を守るためには「財源確保」と「制度の持続可能性」が両立すべきだと考えています。
- 年金や介護、医療など社会保障の財源を、ただの保険料や一部の税負担でまかなうのではなく、高所得者層・大企業への応分の負担を求める税制改革を通じて確保するべきと主張。これにより社会保障の安定性を担保するという立場です。
- また、介護報酬削減や民間任せの福祉ではなく、公的責任による保障体制の強化、公的支出拡大を通じて、すべての高齢者が安心できる社会保障をめざすという姿勢をとっています。
✅ 意義と狙い
このような高齢者福祉政策は、単に現状の維持をめざすものではなく、以下のような理念と狙いがあります。
- 高齢者を社会の「消費対象」「負担対象」とみなすのではなく、「敬愛すべき存在」「社会の財産」として尊重しています。
- 年金・医療・介護の三本柱を安定させ、多くの高齢者が「安心」「尊厳」「住み続けられる生活」を送れるよう支える
- 社会保障の「削減・見直し」ではなく、「拡充・強化」を通じて、格差や貧困、高齢者の孤立を防ぐ
- 財源を議論する際に、富裕層・大企業への累進性による応能負担という民主税制の原則を重視
障がい者福祉の具体的政策
🎯 基本方針 — 障がいは“自己責任”ではなく、公的責任で保障
- 共産党は、障がいを「個人の自己責任」ではなく、社会の責任によって支えるべき問題と位置づけています。障がいのある人々に対する福祉・医療・所得保障は、国や自治体の公的責任だと主張しています。
- また、2014年に批准された障害者権利条約(国連条約)に即し、「障害のない市民との平等」「差別や偏見の根絶」「社会参加・共生を保障する社会」の実現を目指すと明言しています。
🛠 制度改善・福祉サービスの拡充
共産党が目指す障がい福祉の制度改善・拡充の柱には、以下のような具体的な項目があります。
- 現行の福祉制度において、「福祉サービス利用に対する応益負担(利用者負担)」を原則として撤廃し、無料または負担軽減を目指す。過去の制度(たとえばかつての福祉サービス利用の応益負担)を「憲法/福祉の理念に反する」と批判し、全面的な「権利としての福祉」の確立を訴えてきました。
- 障がい福祉サービスが利用しやすいよう、制度の拡充・改善を図る。たとえば、障害のある人やその家族が、福祉サービス・医療・就労支援などを必要に応じて受けられるよう、公的責任で保障する社会福祉体制を整備する。
- 障がいの種類や程度、年齢、性別、さらに病気の有無(難病・慢性疾患)などに関係なく、支援対象とする「包括的な制度」を目指す — いわゆる「固定イメージとしての障がい観」にとらわれず、多様なニーズに応じた福祉を実現します。
👥 所得保障・経済支援の強化
障がい者・難病患者の生活・就労の実態をふまえ、福祉だけでなく経済的な支援の重要性を強調しています。
- 障害年金(または障がいに応じた年金・給付)の見直し。特に、物価高騰のもとで「年金・給付水準の実質的な改善」を求めており、減額制度の廃止や支給額の引き上げを訴えています。
- 障がい者の福祉・就労支援施設や事業所が、燃料費や物価高によるコスト増に苦しんでいる現状を踏まえ、水光熱費・食材費・ガソリン代などの支援や減収の補填を行うよう国に求める。これによって、工賃・賃金の低下を防ぎ、福祉施設の存続と安定を保障する。
- 雇用の場を保障 ― 障がいのある人もいきがいをもって働きやすいよう、就労支援・職業訓練・就労継続支援などの強化を訴えています。福祉だけでなく、自立と社会参加の支援を重視しています。
🏥 医療・難病・慢性疾患への対応 — 医療保障と差別撤廃
- 障がいだけでなく、難病や慢性疾患を抱える人々も、福祉・医療の対象とするべきと強く主張しています。たとえ「身体障害者手帳」を持たない難病・慢性疾患患者であっても、「治りづらい/長期療養を必要とする障害者」として包括的に支援する必要があります。
- また、かつての差別や偏見の象徴であった旧優生保護法による社会の傷痕を認め、その不当性を明示。差別と偏見の根絶、公平・平等な社会保障の実現を訴えています。
- 医療と福祉を切り離さず、連携させることで、障がいや難病、加齢、環境の変化に応じた包括的支援を実現する姿勢を示しています。
🔎 なぜこれが必要か — 現状の問題点とその改善
共産党がこれらの政策を掲げる背景には、以下のような現実認識があります。
- 日本では、福祉予算に占める障がい福祉の割合が低く、先進国水準に比べて十分な支援が行き届いていない。特に難病・慢性疾患患者などは「福祉の谷間」に置かれやすい。
- 福祉サービスに応益負担(自己負担)があることで、必要な支援をあきらめざるを得ない障がい者や家族が多く存在。これでは「権利としての福祉」が保障されない。
- 障がい者や難病者が、医療・福祉・就労・社会参加などを通じて自立・尊厳のある暮らしを送るには、「制度の抜本改善」と「行政の責任ある支援」が欠かせない──という認識です。
✅ この政策の構えの特徴
共産党の障がい福祉政策は、単なる「制度の維持」や「部分的な改善」を目的とせず、以下のような包括的かつ権利重視のアプローチをとっています。
- 障がいを「個別の問題」や「個人の責任」とみなさず、「社会的責任」「国民全体の義務」と捉える。
- 障がいの有無、種類、程度、年齢、背景(難病・慢性疾患など)を問わず、すべての人に保障を ― 「排除されない福祉」。
- 医療・福祉・就労・所得保障・地域参加を一体化して支援 ― 「生きること」「働くこと」「社会参加すること」の権利を保障。
- 公的責任と財政支出を優先し、利用者負担や民営化に頼らない ― 「誰も取り残さない社会保障」。