平和・安全保障政策

日本共産党の平和安全保障政策

平和・安全保障政策の概要

 日本共産党の安全保障政策は、憲法9条を厳格に守り、軍事力によらない平和外交を基本とする点に特徴がある。自衛隊については、現行憲法と両立しない存在と位置づけ、将来的には段階的解消を目指すとしている。日米安全保障条約は、日本を米国の戦争に巻き込む危険があるとして廃棄を主張し、在日米軍基地の撤去を求める。安全保障の代替として、国連憲章に基づく集団安全保障体制の強化、東アジアでの平和条約や信頼醸成措置の推進、外交交渉による紛争解決を重視する。また、軍事費の拡大や敵基地攻撃能力の保有に反対し、人間の安全保障や国際協調を軸とした平和国家像を掲げている。

基本理念

 日本共産党の安全保障政策は、「戦争を起こさせない日本」「軍事力に依存しない安全保障」を基本理念としており、日本国憲法、とりわけ憲法9条を積極的に生かす立場に立って構築されている。他党が抑止力として軍事力の強化を重視するのに対し、日本共産党は、戦争の原因そのものを外交と国際協調によって取り除くことこそが安全保障の核心だと位置づけている。

日本国憲法九条

 まず憲法9条について、日本共産党は「制約」ではなく「力」だと捉える。武力行使を放棄し、紛争を平和的手段で解決する姿勢を明確にすることで、国際社会からの信頼を高め、日本が軍事的対立の当事者になることを防ぐという考え方である。この立場から、集団的自衛権の行使容認、敵基地攻撃能力の保有、防衛費の大幅増額、武器輸出の拡大など、近年の日本の安全保障政策の転換に一貫して反対している。

自衛隊

 自衛隊については、憲法9条との関係で「憲法と両立しない存在」との立場をとっている。ただし、現実に自衛隊が存在し、国民生活の中に組み込まれていることを踏まえ、直ちに解消するのではなく、国際環境の改善とともに段階的に縮小・解消する方針を示している。その間の自衛隊の役割は、災害救助、救難活動、国連の非軍事的活動などに限定すべきであり、海外での武力行使や他国軍との一体的運用には反対する。

日米安全保障条約

 日米安全保障条約は、日本共産党の安全保障政策の中で最も重要な批判対象の一つである。同党は、安保条約が日本を米国の世界戦略の一部に組み込み、日本の意思とは無関係に戦争に巻き込まれる危険を持つと主張する。また、在日米軍基地の存在は、航空機事故、騒音、環境汚染、事件・事故などを通じて国民の人権を侵害しているとして、条約の廃棄と在日米軍基地の撤去・無条件返還を求めている。とりわけ基地が集中する沖縄の状況は「構造的差別」だと位置づけ、その是正を強く訴えている。

日米平和友好条約

 一方で、日本共産党は米国との関係そのものを否定しているわけではなく、軍事同盟に依存しない「対等・平等な友好関係」への転換を提唱している。経済、文化、外交の分野で協力関係を築きつつ、軍事的従属から脱却することが、日本の真の独立と平和につながるという立場である。

国連憲章に基づく集団安全保障

 代替的な安全保障の枠組みとして、日本共産党が重視するのが国連憲章に基づく集団安全保障である。国連を中心に、国際法を尊重し、外交交渉、仲裁、経済制裁など非軍事的手段を活用して紛争を解決することが基本とされる。日本は軍事大国ではなく、「平和外交国家」としてその先頭に立つべきだとされている。

東アジアに平和の共同体を

 地域的には、東アジアの平和構築を重要課題と位置づけている。中国や韓国、北朝鮮との間で対話と外交を積み重ね、相互不信を解消することが軍事的緊張の緩和につながるとする。領土問題や歴史問題についても、力による解決を否定し、国際法と外交交渉に基づく解決を主張する。また、ASEANを含む多国間の安全保障対話の枠組みを強化し、東アジア全体を戦争の心配のない地域にする構想を掲げている。

核兵器禁止条約

 核兵器問題は、日本共産党の安全保障政策の柱の一つである。同党は「核抑止論」を厳しく批判し、核兵器は使用されれば人類と文明を破壊する非人道的兵器であり、抑止ではなく危険を拡大すると主張する。日本は唯一の戦争被爆国として、核兵器禁止条約に署名・批准し、核廃絶の国際的運動を主導すべきだとしている。

国民生活・環境における安全保障

 さらに、日本共産党は安全保障を軍事分野に限定せず、「人間の安全保障」の視点を重視する。貧困、格差、気候変動、感染症、食料問題なども人々の生存を脅かす安全保障上の課題であり、軍事費を拡大するよりも、社会保障や国際協力、環境対策に資源を振り向けるべきだと主張する。

まとめ

 総じて日本共産党の安全保障政策は、短期的な軍事的抑止よりも、長期的な平和秩序の構築を重視する理論的かつ体系的な政策である。「軍事力に依存しない安全保障」という明確なビジョンを持つ点が最大の特徴だと言える。

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